ヘルゲ・エンゲルケ/HELGE ENGELKE

ドイツ出身のギタリストであるヘルゲ・エンゲルケは、ハード・ロック・バンド:フェア・ウォーニングのメンバーとして広く知られているほか、彼を中心に結成したプロジェクト:ドリームタイドのメインコンポーザーとしても活躍しました。磨き抜かれた美旋律を誇る優れたソングライティングと、通称”スカイギター”を用いた天空を駆けるようなハイトーンのプレイは、唯一無二の持ち味となっています。

本記事では、フェア・ウォーニング/ドリームタイド作品のうち、ヘルゲが全面的に作曲に携わった楽曲にフォーカスし、彼のスタイルを浮き彫りにしていきましょう。

これに合わせて、関連楽曲をまとめたプレイリストも公開しているので、ぜひ併せてチェックしてみてください。大ヒット曲から隠れた名ナンバーまで、彼のソングライター&ギタリストとしての才能が光る作品の数々をお楽しみいただければと思います。

メロディアス・ハードロックの代名詞的存在、フェア・ウォーニング

1989年に結成されたフェア・ウォーニングは、ギタリスト:ジーノ・ロートが率いる”ZENO”を母体としており、同バンドのスタイルを引き継ぎつつも、よりハード・ロック色を強化した音楽性を展開しています。作詞・作曲はリーダーのウレ・リトゲン(b)が多くを担当していますが、ヘルゲも各アルバムで数曲ずつ提供しており、ウレ作に引けを取らないヒットを生みました。

2nd『RAINMAKER』(1995年)に収録。ギラギラとしたアルペジオや駆け上がるようなギターソロ、トミー・ハート(vo)のパワフルな熱唱に心を掴まれるミドル・ナンバー。パキッとしたスネアの硬質な音と、湿度のあるシンセストリングスの音色が心地よい。

3rd『GO!』(1997年)のトップバッターを飾る人気曲。ノリ良く躍動感あるギターリフから一気に広大なバンドサウンドへ変化するイントロは、傑作と名高いこのアルバムの幕開けにふさわしい。楽曲展開/歌詞ともにドラマ性があり、スカイギターのハイトーンが存分にフィーチュアされたソロはまさに「天国」を表現しているかのよう。

4th『FOUR』(2000年)収録にして、「Angels Of Heaven」と並んで人気の高い楽曲。どこか民族音楽的な香りをまとった、疾走感のあるハード・ロック・ナンバーである。随所で登場する笛のような音色は、実はヘルゲのギターによるもの。単にギターらしいプレイをするにとどまらない、より自由な表現を追求しようとする姿勢がうかがえる。

バンドの一時的な解散~再結成を経ての5thアルバム『BROTHER’S KEEPER』(2006年)に収録。フェア・ウォーニング作品のなかでは比較的ヘヴィさが強調されており、中盤ではラップのような歌いまわしがあるなど、異彩を放った冒険作といえる。スリリングなストリングスとヴォーカルが、壮大でシネマティックな世界観を演出。

FWの遺伝子を受け継いだヘルゲのニュー・プロジェクト、ドリームタイド

4thアルバム『FOUR』リリース後、度重なるメンバーの脱退によりフェア・ウォーニングは解散状態に陥りました。その間、ヘルゲはバンドの元メンバーであるC.C.ベーレンス(dr)らとともに新たなるプロジェクト:ドリームタイドを始動。ヘルゲをメイン・コンポーザーとして、フェア・ウォーニングの音楽性を継承したメロディアス・ハードロックを展開していきます。

1st『HERE COMES THE FLOOD』(2001年)収録。スペーシ―なシンセから始まり、大地を揺るがすようなドラムや力強いギターが重なっていく様相が実にドラマティック。広大に開けていくサビへと繋がるブリッジ・パートの存在感にも注目だ。ヘルゲの美しいメロディー構築と洗練されたプレイスタイルを惜しげもなく詰め込んだ、フェア・ウォーニングの諸人気作に肩を並べる名曲といえるだろう。

2nd『DREAMS FOR THE DARING』(2006年)収録。冒頭のバネのようなユニークな揺れ音から、一変して情感あふれるハード・ロック・サウンドが展開されていく意外なイントロに驚いた方も多いはず。柔らみのあるハイトーン・ヴォイスで雄大に歌い上げるオラフ・ゼンクバイル(vo)の表現力は前作よりも豊かさを増しており、ヘルゲのエモーショナルなギタープレイとの絶妙なコンビネーションを楽しめる。

ヘルゲの生前最後となった作品『DRAMA DUST DREAM』(2022年)に収録された、穏やかで哀愁たっぷりのスローナンバー。ヴォーカル&指弾きのクリーンギターのみのシンプルな構成で、メロディー、すなわち素材の良質さが前面に押し出されている。

なお『DRAMA DUST DREAM』に関する余談だが、実はヘルゲはギターを始める以前にドラムをやっており、本作のレコーディングでは異名のクレジットでドラムも担当。同アルバム収録「Stop Being Deep」「Spin」のMVでは彼が実際に叩いているシーンも観られるので、興味のある方はぜひチェックを!